自民党を飛び出して16年。悲願の「二大政党による政権交代」がようやく実現した。「友愛精神」を説くリベラルな政治理念は祖父の故鳩山一郎元首相譲り。一方で憲法改正を主張するなど、保守政治家としてのDNAも受け継いでいる。時折見せるつかみどころのない言動から付いたあだ名が「宇宙人」。その独特な感性で日本のかじ取りを担う。
「きずなのある友愛社会の建設を目的とした政党だ」。鳩山氏は11日、海外メディアとの記者会見で、民主党について「友愛」と絡めてこう説明した。5月の代表選でも「友愛外交を推進する」と宣言。友愛が新政権の政策にもかなり反映されるのは確実だ。
ただ、党内でもその理念を正しく理解する向きは少ない。「頼りなさにつながる」と批判的な意見すらあるが、それでも貫き通す一徹な面を持ち合わせる。ソフトな物腰からは想像しにくい部分だ。1993年に「政治改革」を掲げて自民党を離党。新党さきがけを経て、小政党として出発した民主党を「二大政党の一翼」に育てた。細川政権をつくった小沢一郎氏とは、自由党党首時代から親交を深め、同氏が民主党代表に就任してからは幹事長として支えた。永住外国人の地方参政権問題など社会的弱者の救済に積極的な半面、新憲法制定を推進。天皇を元首と位置付け、「自衛軍」保持を明記した試案を発表している。外交政策では「対等な日米関係」が持論で、一時は「常時駐留なき日米同盟」を唱えた。「核兵器のない世界」を追求するオバマ米大統領との信頼関係構築にも意欲を見せるが、米側には警戒感が消えていないだけに、9月に予定される訪米で早速手腕が問われる。
懸念材料は、発言のぶれが見られること。これまで麻生首相はじめ政権側の失言を徹底的に批判してきただけに、自身にも厳しい目が向けられるのは必至だ。また、衆院選前に発覚した政治資金収支報告書への虚偽記載問題もくすぶっており、アキレスけんを抱えての船出となる。(了)
[時事通信社] [ 2009年8月30日20時16分 ]